2026年3月21日、香川県・直島のベネッセハウス パークホールで開催された第4回ウェルビーイング学会学術集会において、「体育会的実践知がもたらすウェルビーイングの構造 ― 身体性・関係性・反復実践に着目して ―」をテーマに研究発表を行いました。
今回の研究は、扇野ゼミでこれまで取り組んできた、キッチンカーを活用した商品開発や地域連携、保護犬支援、若者の投票率向上、高校・企業・行政とのPBL型プロジェクトなど、教室の外での実践活動を学術的な視点から整理したものです。
扇野ゼミでは、学生が現場に出て、企業や地域の方々と関わりながら、企画・商品開発・販売・発表・改善を繰り返しています。
こうした活動の中では、最初から正解が用意されているわけではありません。
「やってみないと分からない」
「失敗して初めて気づく」
「仲間と相談しながら、その場で方法を変える」
こうした経験の積み重ねが、学生自身の学びや成長につながっています。
本研究では、このような体育会活動にも共通する暗黙的な学習様式に着目し、これを「体育会的実践知」として概念化しました。
学生へのインタビューやレポート、日々の活動における参与観察を分析した結果、体育会的実践知は、主に次の3つの要素から構成されることが示されました。
① 身体性
まず行動し、現場で経験しながら学び、失敗を通じて自己効力感を高めていくこと。
② 関係性
仲間や先輩、企業、地域の方々との関わりの中で、自分の役割や責任を理解し、他者に価値を届けること。
③ 反復実践
挑戦と失敗、修正を何度も繰り返すことで、経験の意味が深まり、自分自身の成長へとつながっていくこと。
これら3つの要素が、学生の実践的な成長を支える基盤となっていることが見えてきました。
今回の研究では、ウェルビーイングを単なる幸福度や満足度の「状態」として捉えるのではなく、実践を通じて生まれ続けるプロセスとして捉えています。
学生たちの語りを分析すると、
理念の認識
→ 知識創造
→ 社会的価値
→ 非認知能力
→ ウェルビーイング
→ 理念への回帰・継承
という循環が見えてきました。
活動を通じて大学やゼミの理念を理解し、現場で知識をつくり、その活動が誰かの役に立つことを実感する。
その経験から、挑戦する力や協働性、責任感、自己効力感などの非認知能力が育ち、達成感や成長実感、人とのつながりといったウェルビーイングにつながっていきます。
さらに、その経験を積んだ学生が後輩に、
「迷ったら行動してほしい」
「人とのつながりを大切にしてほしい」
「失敗も成長だと思って挑戦してほしい」
と伝えるようになることで、学びが再び理念へと還元され、次の世代へと継承されていきます。
扇野ゼミでは、これまで大学の建学の精神である「挑戦と創造」を、教室の中だけでなく、地域・企業・社会との実践を通じて体現してきました。
今回の学会発表は、そうした学生たちとの活動を、単なる「良い経験」で終わらせるのではなく、教育の価値として言語化し、研究として社会へ発信する第一歩となりました。
今後は、今回構築した概念モデルをさらに検証し、論文化を進めるとともに、大学教育だけでなく、企業や地域における人材育成やウェルビーイングの形成にも展開できる研究へと発展させていく予定です。
扇野ゼミではこれからも、「まずやってみる」から始まる挑戦と、社会とのつながりの中で生まれる学びを大切にしながら、学生一人ひとりの成長とウェルビーイングにつながる教育・研究・社会実装に取り組んでまいります。